おんでん工房の音づくりについて。

(2). 真空管とMOS-FETについて
半導体の発明以降、消費電力や電気的な諸特性で不利とされている真空管ですが、
今でもその音は高く評価され、愛好家も多い様です。
CDよりアナログレコードの音が好まれる現象に、近いものがあると思われます。

真空管の代表的な特長に「2次特性」があり、高インピーダンス出力との相乗で、
数多くのご利益をもたらしてくれます。
この非線形の特性は、測定器などでは邪魔者となり、徹底的に排除されますが、
音の世界では、極上の効果を発揮します。

NPN型やPNP型の(バイポーラ)トランジスタは、対数特性を持ちます。
また、特性の立ち上がり部分が折れ曲がっているので、A級やAB級のアンプでは、
その領域を避けるために定格出力に応じたバイアス電流が必要になります。
さらに、出力をエミッタから取り出すと、低インピーダンス出力が得られる代わり
に最大出力付近で特性が折れ曲がります。
よって、アンプに適した出力の範囲は設計により決定され、その領域内では、
対数特性動作が基本となり、少しでも領域をはみ出すと、音が破壊されます。

真空管の2次特性では、低出力領域でも折れ曲がることなく、また高出力でも、
高インピーダンスにより、緩やかに飽和します。(ソフトディストーション)
これらの特性により、真空管アンプの音は、偶数次歪を含みやすくなります。

測定器の用途では嫌われものの偶数次歪などの高調波歪ですが、楽器の世界では
倍音と呼ばれ、楽器固有の音色を決める重大な要素になります。
一般的には、豊かな倍音を持つ楽器の音が好まれる傾向があります。
ひとつの楽器でも、単音よりオクターブ上の音を同時に出したり、和音にすると
音に厚みが出てきます。
幾何学的には直方体や立方体はきれいに思えますが、多くの魅力的な楽器が、
曲げたり、傾けたり、複雑な凹凸を付けることで、倍音を豊かにしています。
もし倍音や歪のない音を純粋な音とすると、それは単一正弦波の音です。
おんさの音がそれに近いのですが、演奏ではトライアングルが使われます。

FETとは、「電界効果型トランジスタ」のことで、上述のバイポーラトランジスタ
に対し、ユニポーラトランジスタとも呼ばれます。
MOS-FETは、金属酸化膜でゲートを構成するFETです。
これらの半導体は、構造、原理が真空管に近く、2次特性など、真空管と同様の
特性を持ちます。
さらに、低い電源電圧で動作し、ヒータが不要、半永久的で丈夫で、たたいても
ノイズはでません。
真空管では不可能な、コンプリメンタリ特性を持つ素子が存在します。

FETは、民生機器以外の用途にも多く使われていますが、アンプの世界でも魅力的な
素子なのです。


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