おんでん工房の音づくりについて。

(3). 電気的特性とNFBについて
真空管の音は、「線が太い」とか、「なまめかしい」とか表現されます。
しかしながら、すべての真空管アンプが満足できる音なのでしょうか?

NFB(ネガティブフィードバック)は、出力を反転して入力の戻す技法です。
多量のNFBをかけると、トータルゲインが下がる代わりに、f特(周波数特性)や
歪率が改善されます。
オープンゲインが大きく、広大域のOPアンプでは、多量のNFBにより、理想的な
電気的特性を持つアンプを実現できます。
ここでの理想的とは、広帯域,低歪率,f特がフラット,低出力インピーダンス
など、直線性を求められる計測器用のスペックです。

オーディオには、実に不可解な現象があります。
可聴帯域は20〜20kHz,スピーカのインピーダンスは4〜16Ωで、最大出力を1W
とすると、これらの条件を満たすアンプであれば同じ音が出ることになります。
優秀なスピーカでも、周波数特性の上限は40k〜70Hzあたりです。
ところが、100kHzまで再生できるアンプの音は、上限が20kHzのものと比べると
音に差があることがあります。
ことばでは、「立ち上がり」とか「分解能」とか呼ばれます。
1Ωまでドライブできるアンプでは、「制御性がいい」とか表現されます。
なんとスピーカを通して、特性が1桁も2桁も違うアンプを識別できるのです。
また、接点やカップリングコンデンサ,トランス,増幅段など、音(信号)
を劣化させる元凶とする説もあります。
劣悪(不向き)な部品もあるのも事実ですが、接点が何点もある真空管アンプ
が好まれたり、「はんだ付より圧着がいい」とか「フラットアンプを省略しな
い方が音が生き生きとする」といった説もあります。

出力段に多数のTrをパラ接続,巨大電源により瞬時電力供給能力を確保したり、
高NFBによる低歪率化すると、確かに電気的な特性は向上します。
しかしながらアンプにとって理想的な電気的特性を追求することは、アプローチ
のひとつで、不可欠な要素ではなく、音を保証するものでもありません。

高NFBや、定電圧電源を搭載したアンプの音は、ときに平面的だったり、音圧の割
には音が遠くに聴こえたりすることがあります。
車載用バッテリ,極太ケーブルもこれと似た傾向があります。
オープンのf特とゲインがあれば、高NFBによる特性向上は難しくありません。
真空管でも、高NFBが可能です。
NFBは、特性を向上させるためには有効な手段で、多くのメリットもあります。
しかし、特性向上の代償として、真空管らしさが薄れてしまいます。
素子や回路が異なっていても、これらの手法で特性を向上させたアンプは、
どれも音の傾向が似ている様に感じてしまいます。

音響用アンプとしてNFBの特長を生かす方法のひとつとして、素性のよい素子
を、ごく微量のNFBで動作させることを提案します。


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